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これが彼との出会いです

私が林田学さんと初めてであったのは、3年前のことでした。
シュッとしたスーツ姿で鮮やかな朱色のネクタイをしめていたその姿を今でも鮮明に記憶しています。
その日、私たちが食事をしていたレストランで、あるテーブルの客がデザートに季節の果物のフランベを注文しました。
程なく、レストランの若い男性が移動式のコンロを押してやってきました。
果物の皮をむき終えると、熱したフライパンでグラニュー糖を溶かし、そこにバターを入れ、レモン汁を絞ります。
もう既におなかがいっぱいだったのに、こちらにまで漂ってくる甘い香りが食欲を刺激します。
フライパンに果物が投入され、甘く香ばしい香りのソースが満遍なく絡められると、いよいよ熱したブランデーがフライパンに注がれます。
炎がフライパンを包み込み、注がれるブランデーに沿い、下から上へと炎が伝います。
その時、「熱っ!!」という声をあげ、フランベを調理する男性がフライパンから手を放しました。
床に落下した炎を纏うフライパンは、たちまち炎をカーペットに移します。
まだ小さい炎でしたが、あたりはあっという間にパニックになりました。
慌てる人々の中、一人落ち着いて炎に向かっていたのが林田学さんでした。
彼は自分が着ていたジャケットを脱ぐと、すかさずそのジャケットで、バッシバッシと炎をたたき、あっという間に炎を消してしまったのでした。
炎が消えたことを確認すると、何事もなかったかのように再びジャケットに袖を通した時、ジャケットの内側に「林田」の文字が刺繍されているのが見えました。
「ありがとうございました!」何事もなかったかのようにまた席に戻ろうとする彼に、その時最初に感謝の言葉を口にしたことが、私と彼との友人としての関係の始まりでした。